猩々通信
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Gotcha 1

2004 by 猩々

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暗がりで
見知らぬ誰かに
甘えて居たね
妖しく光る
君の細い眼

処女鼠
雄は不要の
近未来
さぞや姦し
我関せず焉

丘陵の
尾根に吹く風
寒葵
若葉が開く
ベランダの鉢

露草の
小さな玉に
蝸牛
水差しの口
粟粒一つ

伏せ鉢に
雫の調べ
春の暮
やがては夜の
雨音ばかり

目借時
吊り輪取らるる
間抜け者
通勤電車
行く春の朝

葉桜の
翳で掻っ込む
塩の鮭
水面を扱く
鴨唯一羽

駄々を捏ねたり
嫌々したり
勘弁してよ
XP

スーパーの
悪魔の誘い
柏餅
味噌餡黄粉
凡夫の迷い

ソフト舐め舐め
街中行脚
白く眩しい
花水木

天蕎麦の
値段に仰天
菜種梅雨
大事な手帳
置き忘れたり

ジャスミンの
花咲く垣の
駐車場
子猫見守る
野良の母猫

囚われの
人の安否が
気に掛かる
私は鉢に
朝顔を播く

リタイアし
下る山道
花筵
木苺の花
山吹の花

ストーブの
陽炎に燃ゆ
富士の山
拉げコッヘル
零す珈琲

郭公の
鳴く尾根道に
寒葵
引きも切らさず
ハイカーの群

盛りにしようか
冷やしにしよか
軒に燕の
駅の蕎麦

ベランダに
見て見ぬふりの
寒葵
春蝉の鳴く
町の夕暮れ

昼下がり
花より団子
神田川
鳩に椋鳥
雀鵯

武蔵野の
春を集めて
花筏
神田上水
朝靄の中

蜘蛛の巣の
森の瓦場の
宝鐸を
擦り落ちて行く
我は見上げる

八重桜
咲いた途端の
春嵐
ミニスカートが
飛ばされて行く

講堂に
さよならの声
花夙
暗き鶏舎で
ファニーの憂鬱

突風に
よろけて歩く
春の朝
何の是しき
上州男児

花粉症
感冒の熱
血糖値
三禍の吾は
春の只中

多摩川に
蒲公英一輪
風光る
川面に春の
雲が流れる

ロッカーを
ノックし子鬼の
機嫌取り
梅も咲いたよ
もうお帰りな

薄靄の
街の灯りは
星の夜
自転車置き場に
手袋一つ

回り道
立ち喰い蕎麦の
蕗の薹
コートを脱いで
人ごみの中

野蒜萌ゆ
多摩の堤の
春嵐
河原彷徨う
二羽の海猫

春一番
徹夜転寝
チョコの夢
髭も剃らずに
街へ繰り出す

義理チョコも
廻ってこない
バレンタイン
会社の中に
木枯らしが舞う

梅園の
甘酒聞し
建国日
婦人はそっと
霜を踏み締む

馬鈴薯の
鉢にさざめく
春の星
夜遊び猫の
悴んだ鼻

パソコンは
春の炬燵で
丸くなり
あなたの国も
寒いでしょうか

銭洗う
メール零れし
春の日の
長靴下は
ずり落ちにけり

冴え返る
ミニスカートに
身も凍る
仄かに梅の
香る街角

水温み
街に浮かれて
紙魚漁り
鳥の観察
春麗かに

艶蕗と
木賊の庵
六地蔵
願書受付
春の曙

春の日や
くしゃみ鼻水
目に涙
押し合い圧し合い
通勤電車

牛丼が
豚丼に化け
昼飯は
親子も食えず
亦蕎麦の日々

防人は
海を渡るよ
山笑う
空に赤星
追いかけて行く

山雀の
平和の叫び
根深汁
兵は繰り出す
豆撒きの朝

バス停の
枯れ芝草に
犬の糞
ピッチの塔や
冬晴れの朝

携帯で
話す振袖
捲り上げ
新成人の
ピアス輝く

ベランダの
苺を包む
牡丹雪
何処かで猫の
恋の溜息

交番の
露地の煌き
霜の朝
寒中暖あり
水仙の花

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