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夏草や 趣く侭に 茂りおる 猫も走れぬ 狭きベランダ 鈴虫は 軈てベランダ 縁の下 今は八百屋の 西瓜の傍に 南風 朝の木漏れ日 並木道 額紫陽花は 首を傾げる 走り梅雨 恋する猫は 濡れ鼠 空地の隅に 枇杷の実たわわ 古漬の 油炒めは 古里の 母の味には 遠く及ばず 伸し棒に 蕎麦を絡めて 五月尽 蛙鳴く町 夕風涼し 百円の 店を巡って 週末を 豪奢に過ごす 赤貧の吾 古の 王の在す 墳丘の 之防人の 落書きの痕 蒸し風呂の 午後の会議は 開け放つ 窓に漂う 魚焼く風 四安打 箸が止まった 本塁打 味噌ラーメンの 汗を拭きつつ 束の間の 禁酒を破る 冷奴 貧乏神の パレード可笑し 校庭で 予行演習 子の姿 野糞座りで そっと窺う 夏の日を 素面で拝む ベランダの 薊の花に 蜜蜂が飛ぶ 酒が切れ 夕の蕃茄の 味気無さ パックの山に 貧乏神が 燕麦の 若葉を君は 猫跨ぎ 渋蕗の花に 嚔する君 銀幕の 星の誕生 カンヌ祭 誰も知らない 若武者の顔 雨上り 款冬が吹く 口沫を 蛍の宿と 母は宣ふ ぺちゃんこの 蝦蟇が流れる 散歩道 台風の風 雨漏りの傘 急流に 逆立ち鴨の 神田川 醤油の匂い 真っ青な空 身構えて 餓鬼に向かって 突進す 雨の並木の 学園の街 果てしなく 続く会議は 上の空 飛行船の 音は軽やか 君が来て サボテンの棘 噛み砕く 五月雨降る 休日の朝 叢に 蟻ん子の列 消え入りぬ 屈みに屈み 老いた眼で追う 蝦蟇の子が 迷い出る夜 並木道 摘まんで拾う 夜の散歩者 山行きの 思案に暮れる 皐月雨 小さな砥石で 剃刀を研ぐ 痩けた頬を 更に凹ます 抜け歯茎 弛んだ目朶 剃刀怯む 切れ端の ベルトで漱ぐ 剃刀の 谷成りの刃に 艾人の顔 風薫る ビルの狭間に 飛行船 昼の気怠い プロペラの音 胸が触れ 尻合わさって 蹌踉めいて 其れが如何したい 通勤電車 パンプスは ホームの下に 転げ落ち 喧々跳びの お転婆の朝 呑みすぎて 襤褸家で臥せる 夜も更けて 御旅所入りの 花火聞える 雨上がり 遠く花火の 菖蒲風呂 20年もの 錆びた風呂桶 嘶いて 夏に駆け出す 競馬式 欅の馬場に 夕闇迫る 宵宮の 春送る式 駒競べ 栗毛が走る 葦毛が駆ける 射的場の 客引く香具師の 怖い顔 夏の足音 さあ競馬式 臍の緒は 親子の絆 新生児 臍帯血は 命の絆 長袖の シャツを攫った 春嵐 烏の豌豆 咲く庭の朝 蕎麦屋お二階 ドタ靴脱いで ランチは陳ねた 狸蕎麦 プランタの 茗荷の角を 鳩は折り パンより溢る 糠は芳し 満腹の エコロジマシンは 吐き戻す ペットボトルは また部屋の隅 |