残された 子猫を連れて 赤飯 空地に秋の 夕闇迫る 雨が降る 並木の道に 雨が降る 秋を運んで 木々に降る 朝涼し 紺屋の前で 赤虎は フォール寸前 気吹を発す 階段は 二日目の足 山登り 蕎麦の風吹く 頂の駅 夕闇に 油蝙蝠 霞め飛ぶ 向いの窓に 五輪瞬く 清滝の 谷に木霊し 法螺貝の 後から後から 修験者の列 擦れ違う 人も無くなり 夏鳥の シャックリ続く 下る山道 救難の 人と担架は 梢越す 一丁平に ヘリの風吹く 影信の 頂を薙ぐ 葛の風 遥か我が町 単眼に見る 砂利窪に 憩う初秋の 岩清水 震える声で 邯鄲が鳴く 邯鄲の 談義の二人 並木道 消え入りそうな 眉月の空 暁の 雲は気ままに 流れ行く 五輪吹っ飛ぶ 酷い珈琲 揺れる尾の 先で精霊 飛蝗跳ぶ 車の下の 君の見る夢 この人に クサヤを焼いて 勧めたい 月を愛でつつ 虫を聞きつつ 台風と 五輪競技と この暑さ それにつけても 虫の秋かな 残心の 畳の上の 美しさ 大和撫子 笑みを振り撒く 飯喰えば 米穀通帳 思い出す TVで笑う 五輪の選手 引き揚げの 兵は戦車に 連なりて 地響きの中 幼子の我 朝顔は 半ば開きて 躊躇いつ 雨で迎えた 終戦の朝 一頻り 食器洗えば 君の声 蝉は闇夜に 鳴き続けてる 殻を捨て 蝉は転生 朝夙 我が奥底に 蟠る殻 水を遣り 糠を掻き混ぜ 飯を食い アイロン掛けて 髭当たる朝 真夜中の 窓の灯りの 瞬きと 大和撫子 快勝の声 襤褸寝茣蓙 蚊取り線香 夜の霧 月賦の悩み 頭を垂れる 目が重い 眠っちゃ駄目だ フリーザード 車中遭難 通勤電車 とっぷりと 暮れて家路の 並木道 青松虫が 付き纏う夜 コンビニの 傘は天下の 廻り物 土砂降り雨に 立ち竦む人 夕立の 雲に灯が 灯る頃 並木の道に 蜩が鳴く 四割りの 西瓜を独り 齧り付く 塩を一振り 艾老の贅 所在なく 渦巻き見つつ 秋立ちぬ 洗濯日和 昼寝する君 親鳥の 澪に連らなる 鴨の雛 小さな池の 夏は過ぎ行く 青空に 祈る平和の 原爆忌 秋の足音 栗の実青く 鵯に 追われ梢で 一休み そして鳴き出す 一夏の蝉 白妙の 蝉の輝き 夏の夜の 嵐の雲の 垂れ込める街 並木道 鼻を摘んだ 蝉の声 空に一杯 綿飴の雲 冬瓜の 汁に一汗 綿雲の 沸き立つ空に 蝉の鳴く朝 汗沢で 半そで襯衣を 火熨斗する 真ん丸眼で 君は見ていた 夢現 蝉の斉唱 合いの手は 遠く花火の 尺玉の音 下帯締めて 八朔相撲の 男達 ミンミン蝉の 鳴きしきる杜 台風の 雲の間に間に 浮かぶ月 君の甘えた 声が聞こえる 真夏日の 冷凍電車に 飛び乗れば タンクトップの 鳥肌の美女 御器噛の 宝の箱の 忘れ物 箒で集め 水を打つ朝 文字化けに ネットワーカー 渋い顔 グレンダロッホの 聖者に捧ぐ じゃあまたね 遊び疲れて 夏の夜 大きな足で 掻き直す君 夏の日の 小田原会議 眠い午後 徐々に近づく 雷の音 夕涼み 慈姑が揺れる ベランダの 僕を窺う 君の光る目 唐黍を 茹でて飲む酒 蝉の声 微睡の午後 夏は沈沈 へばり付く 蝉も道連れ お遍路の 不動ヶ丘に 我唯一人 |