猩々通信
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Gotcha 4

2004 by 猩々

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残された
子猫を連れて
赤飯
空地に秋の
夕闇迫る

雨が降る
並木の道に
雨が降る
秋を運んで
木々に降る

朝涼し
紺屋の前で
赤虎は
フォール寸前
気吹を発す

階段は
二日目の足
山登り
蕎麦の風吹く
頂の駅

夕闇に
油蝙蝠
霞め飛ぶ
向いの窓に
五輪瞬く

清滝の
谷に木霊し
法螺貝の
後から後から
修験者の列

擦れ違う
人も無くなり
夏鳥の
シャックリ続く
下る山道

救難の
人と担架は
梢越す
一丁平に
ヘリの風吹く

影信の
頂を薙ぐ
葛の風
遥か我が町
単眼に見る

砂利窪に
憩う初秋の
岩清水
震える声で
邯鄲が鳴く

邯鄲の
談義の二人
並木道
消え入りそうな
眉月の空

暁の
雲は気ままに
流れ行く
五輪吹っ飛ぶ
酷い珈琲

揺れる尾の
先で精霊
飛蝗跳ぶ
車の下の
君の見る夢

この人に
クサヤを焼いて
勧めたい
月を愛でつつ
虫を聞きつつ

台風と
五輪競技と
この暑さ
それにつけても
虫の秋かな

残心の
畳の上の
美しさ
大和撫子
笑みを振り撒く

飯喰えば
米穀通帳
思い出す
TVで笑う
五輪の選手

引き揚げの
兵は戦車に
連なりて
地響きの中
幼子の我

朝顔は
半ば開きて
躊躇いつ
雨で迎えた
終戦の朝

一頻り
食器洗えば
君の声
蝉は闇夜に
鳴き続けてる

殻を捨て
蝉は転生
朝夙
我が奥底に
蟠る殻

水を遣り
糠を掻き混ぜ
飯を食い
アイロン掛けて
髭当たる朝

真夜中の
窓の灯りの
瞬きと
大和撫子
快勝の声

襤褸寝茣蓙
蚊取り線香
夜の霧
月賦の悩み
頭を垂れる

目が重い
眠っちゃ駄目だ
フリーザード
車中遭難
通勤電車

とっぷりと
暮れて家路の
並木道
青松虫が
付き纏う夜

コンビニの
傘は天下の
廻り物
土砂降り雨に
立ち竦む人

夕立の
雲に灯が
灯る頃
並木の道に
蜩が鳴く

四割りの
西瓜を独り
齧り付く
塩を一振り
艾老の贅

所在なく
渦巻き見つつ
秋立ちぬ
洗濯日和
昼寝する君

親鳥の
澪に連らなる
鴨の雛
小さな池の
夏は過ぎ行く

青空に
祈る平和の
原爆忌
秋の足音
栗の実青く

鵯に
追われ梢で
一休み
そして鳴き出す
一夏の蝉

白妙の
蝉の輝き
夏の夜の
嵐の雲の
垂れ込める街

並木道
鼻を摘んだ
蝉の声
空に一杯
綿飴の雲

冬瓜の
汁に一汗
綿雲の
沸き立つ空に
蝉の鳴く朝

汗沢で
半そで襯衣を
火熨斗する
真ん丸眼で
君は見ていた

夢現
蝉の斉唱
合いの手は
遠く花火の
尺玉の音

下帯締めて
八朔相撲の
男達
ミンミン蝉の
鳴きしきる杜

台風の
雲の間に間に
浮かぶ月
君の甘えた
声が聞こえる

真夏日の
冷凍電車に
飛び乗れば
タンクトップの
鳥肌の美女

御器噛の
宝の箱の
忘れ物
箒で集め
水を打つ朝

文字化けに
ネットワーカー
渋い顔
グレンダロッホの
聖者に捧ぐ

じゃあまたね
遊び疲れて
夏の夜
大きな足で
掻き直す君

夏の日の
小田原会議
眠い午後
徐々に近づく
雷の音

夕涼み
慈姑が揺れる
ベランダの
僕を窺う
君の光る目

唐黍を
茹でて飲む酒
蝉の声
微睡の午後
夏は沈沈

へばり付く
蝉も道連れ
お遍路の
不動ヶ丘に
我唯一人


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