猩々通信
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Gotcha 5

2004 by 猩々

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柿の木に
秋の名残
九十
垂れる水洟
拭う手袋

ポケットの
ジッポを堅く
握り締め
黄金の並木
吐く息白く

木枯らしの
街に灯りは
瞬いて
君はいそいそ
尾を振りたてて

ハリポタが
行く手を阻む
紅葉狩り
窓に霜降る
満月の夜

百円の
箒で寄せる
濡れ落ち葉
やがて木枯らし
冬晴れの朝

小春日の
川風に乗り
空高く
ドッグファイトの
烏と鳶

揺れ動く
兎の小屋の
片隅で
点てる珈琲
地震の知らせ

塀に乗り
君の見上げる
半月は
嵐の去った
空に傾げて

五並びの
ゴジラが吼える
新聞紙
朝の電車の
秋も更け行く

駅の蕎麦
三日も前の
台風は
ズボンの裾に
物語るだけ

鵯の
雛は梢に
二羽三羽
四季成苺
たわわに実る

細腕の
針の滲跡
眺むれば
断酒の日々の
解放記念日

せせり出る
水に慌てて
起き上がる
でんでん虫の
食べ頃かしら

見え隠れ
君は抜き足
忍び足
烏の胡麻の
鞘の間に間に

台風に
雨靴出して
濡れ戯る
濡れ濡つ程
笑う切なさ

今日は雨
今日は嵐の
週末の
それでも炊ぐ
山行きの飯

土佐犬の
四股踏み歩く
公園の
金木犀は
長雨に聞く

洗濯を
終えて見上げる
秋の空
釣瓶落としに
日が沈む頃

暦見て
歳を数える
誕生日
娘の呉れた
冬の靴下

卓袱台に
秋刀魚の刺身
猪口の酒
TVで笑う
イチローの髭

ドーナツの
店のラーメン
箸を添え
まだ物足りぬ
楊枝は何処

洗濯を
終えて見上げる
秋の空
釣瓶落としに
日が沈む頃

鮭弁の
鮭が何処かに
雲隠れ
こんな日もある
群青の空

長葱が
背中で匂う
秋の暮れ
並木は続く
犬人車

雉鳩の
声厳かに
鰯雲
山の屁の滓
降り注ぐ朝

二科展の
其処だけ燃える
煉瓦壁
折り目鮮やか
逓信の便

辿り着く
町の外れの
図書館は
エノコログサの
生い茂るだけ

一揺れし
これが辞世か
二揺れし
手直しだらけ
秋の夜長よ

日延べした
冷麦零す
流し場に
何時しか伸びた
お日様の影

手拭を
日本のと問う
百円の
店も行楽
秋の装い

浅川の
土手で頬張る
胡麻掬び
空一杯に
単軌車が行く

山行きの
陽は燦々と
秋の空
ピーナツバター
塗りたくる朝

イチローの
次のニュースは
曼珠沙華
心は踊る
山の週末

嵐去り
蝦蟇は塒へ
戻り行く
並木は朝の
人の賑わい

銀杏は
毀れる儘に
台風の
夜に自転車
老婆押し行く

五冊目の
最終章は
月曜日
雨も上って
蟋蟀の宵

図書館の
外は秋霖
日曜日
一山の本
リュックの重み

雨模様
睨めど晴れぬ
秋の朝
ストーブ磨く
兎の小屋で

飯店の
軒に転がる
植木鉢
並木に秋津
台風の朝

台風の
風に煽られ
スカートに
負けじと叫ぶ
木の上の虫

浅間山
掻っ切るような
屁を扱いた
君から聞いた
長き秋の夜

珈琲の
祟り恐ろし
秋の夜の
後ろから読む
ミステリーの本

豊漁だ
だけど不足だ
秋刀魚漁
目を白黒の
経済の怪

鯛焼きを
四つも買って
いそいそと
せめて一献
浅儚な夢

霧雨は
シャッポの染みと
混じり合い
膝丈下を
燕飛び交う

小車を
不器用に止め
三回忌
降り出しそうな
霊園の空

気に食わぬ
チャンネル変えて
尚悪し
星占いを
今日は信じぬ


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