柿の木に 秋の名残 九十 垂れる水洟 拭う手袋 ポケットの ジッポを堅く 握り締め 黄金の並木 吐く息白く 木枯らしの 街に灯りは 瞬いて 君はいそいそ 尾を振りたてて ハリポタが 行く手を阻む 紅葉狩り 窓に霜降る 満月の夜 百円の 箒で寄せる 濡れ落ち葉 やがて木枯らし 冬晴れの朝 小春日の 川風に乗り 空高く ドッグファイトの 烏と鳶 揺れ動く 兎の小屋の 片隅で 点てる珈琲 地震の知らせ 塀に乗り 君の見上げる 半月は 嵐の去った 空に傾げて 五並びの ゴジラが吼える 新聞紙 朝の電車の 秋も更け行く 駅の蕎麦 三日も前の 台風は ズボンの裾に 物語るだけ 鵯の 雛は梢に 二羽三羽 四季成苺 たわわに実る 細腕の 針の滲跡 眺むれば 断酒の日々の 解放記念日 せせり出る 水に慌てて 起き上がる でんでん虫の 食べ頃かしら 見え隠れ 君は抜き足 忍び足 烏の胡麻の 鞘の間に間に 台風に 雨靴出して 濡れ戯る 濡れ濡つ程 笑う切なさ 今日は雨 今日は嵐の 週末の それでも炊ぐ 山行きの飯 土佐犬の 四股踏み歩く 公園の 金木犀は 長雨に聞く 洗濯を 終えて見上げる 秋の空 釣瓶落としに 日が沈む頃 暦見て 歳を数える 誕生日 娘の呉れた 冬の靴下 卓袱台に 秋刀魚の刺身 猪口の酒 TVで笑う イチローの髭 ドーナツの 店のラーメン 箸を添え まだ物足りぬ 楊枝は何処 洗濯を 終えて見上げる 秋の空 釣瓶落としに 日が沈む頃 鮭弁の 鮭が何処かに 雲隠れ こんな日もある 群青の空 長葱が 背中で匂う 秋の暮れ 並木は続く 犬人車 雉鳩の 声厳かに 鰯雲 山の屁の滓 降り注ぐ朝 二科展の 其処だけ燃える 煉瓦壁 折り目鮮やか 逓信の便 辿り着く 町の外れの 図書館は エノコログサの 生い茂るだけ 一揺れし これが辞世か 二揺れし 手直しだらけ 秋の夜長よ 日延べした 冷麦零す 流し場に 何時しか伸びた お日様の影 手拭を 日本のと問う 百円の 店も行楽 秋の装い 浅川の 土手で頬張る 胡麻掬び 空一杯に 単軌車が行く 山行きの 陽は燦々と 秋の空 ピーナツバター 塗りたくる朝 イチローの 次のニュースは 曼珠沙華 心は踊る 山の週末 嵐去り 蝦蟇は塒へ 戻り行く 並木は朝の 人の賑わい 銀杏は 毀れる儘に 台風の 夜に自転車 老婆押し行く 五冊目の 最終章は 月曜日 雨も上って 蟋蟀の宵 図書館の 外は秋霖 日曜日 一山の本 リュックの重み 雨模様 睨めど晴れぬ 秋の朝 ストーブ磨く 兎の小屋で 飯店の 軒に転がる 植木鉢 並木に秋津 台風の朝 台風の 風に煽られ スカートに 負けじと叫ぶ 木の上の虫 浅間山 掻っ切るような 屁を扱いた 君から聞いた 長き秋の夜 珈琲の 祟り恐ろし 秋の夜の 後ろから読む ミステリーの本 豊漁だ だけど不足だ 秋刀魚漁 目を白黒の 経済の怪 鯛焼きを 四つも買って いそいそと せめて一献 浅儚な夢 霧雨は シャッポの染みと 混じり合い 膝丈下を 燕飛び交う 小車を 不器用に止め 三回忌 降り出しそうな 霊園の空 気に食わぬ チャンネル変えて 尚悪し 星占いを 今日は信じぬ |