猩々通信
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風花歌集1

2000-2001 by 猩々

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新聞の
折込チラシの
双六で
落花生賭けて
遊ぶ元旦

男体山
赤城の山に
榛名富士
妙義の山と
続く青空

消し壷の
陰に隠れた
竈馬
お供え餅は
併対に乗る

トランプは
姉の手作り
猫炬燵
姉さん二人
弟の吾

自転車の
トンガラシ売りは
父の友
今年も替える
陳皮と七味

姉たちの
せっせっせの
お手玉は
小豆に鞐
ウスラウメの春

春になり
三寒四温の
牡丹雪
映画の気分
チャンバラごっこ

初雷に
豆撒く母の
威勢良さ
日光富士は
まだまだ白く

母の手に
引かれて行った
入学日
桜に小の字
帽章眩し

火対に
蒸篭で蒸かした
柏餅
薫風そよぐ
薪は泡吹く

端午の日
黄粉の餡の
柏餅
隣近所の
総出で作る

花山の
ポンポン舟は
ドブの中
尾引き城址の
初夏の賑わい

おかしくて
ガラスのウケの
直ぐ側で
雑魚と戯むる
他所の釣り人

ぬる水の
川底を這う
巻き貝は
銃痕残る
鉄橋の下

ゴミ捨ての
谷地に実った
十茄子を
乞食はもいで
又歩き出す

スカンポの
河原は昔
国境
土に埋れた
丸い川石

縁台で
遠く花火を
眺むれば
ブリキのモービル
風に揺られて

海老蟹を
馬欠一杯
釣ってきて
裏の小庭で
競争開始

逃げ水を
追い掛け遊ぶ
帰り道
黄色い帽子に
塩の噴く夏

割当の
茶の葉に混ぜた
実や小枝
勤労奉仕
さあ夏休み

朝露の
お茶の葉毟る
実も毟る
計量終わって
さあ夏休み

穴虫を
無心で釣った
夏休み
入道雲は
西に東に

干拓の
堤に赤い
シドミ咲き
雲雀囀る
陽炎の道

合ハイは
織姫山に
迷い道
膨れ面で
下る山道

酒樽を
叩いて唄う
八木節の
唐傘踊り
祭りの櫓

酒瓶と
醤油を持った
泥鰌釣
夏のひねもす
小竿を垂れる

初めての
海は遠浅
溝臭く
谷津海岸を
足でほじくる

松の木に
生首下がる
ヤマ道を
嫁入り道中
しずしず進む

人玉が
湯船に映る
夏の夜
蓋を閉めても
唸り続ける

街道の
オトカ行列
悪さして
石を放れば
火の玉返す

反物を
捌いた夜の
帰り道
オトカは川を
道に変えたり

渡良瀬に
仕掛花火の
鯉泳ぐ
窓から乗り込む
最終電車

美代ちゃんの
置き去りにした
スクーター
無花果の木の
夏の木漏れ日

父程に
背丈が伸びて
天秤で
肥桶担ぐ
一反畑

夕暮れて
バケツいっぱい
バラタナゴ
三毛が待ってる
母も待ってる

冷西瓜
手繰る竹竿
井戸馬欠
盥で行水
三時のお八つ

鴉貝
真珠が取れると
信じてた
金魚の池は
タナゴだらけに

お土産は
いつもグリコの
おばあさん
孫に教わる
イロハのカルタ

けんちゃんが
乗って壊した
三輪車
町の鍛冶屋で
涙眼の星

じゃんぼんの
寺で投擲
布施の銭
土くれ掛けて
あばよおばやん

そっと出す
思案の末の
五円玉
駄菓子屋で嘗めた
蛤ニッキ

みんなして
テレビの家に
押し掛けて
前垂れ上げて
さあ始まりだ