猩々通信
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愛問答3

2000 by 猩々

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山道の
蝙蝠傘は
杖代わり
沢に迷って
橋捩じ登る

梅雨空の
高尾の山は
雲の中
頂で食す
ラーメン旨し

ラーメンを
食えば雷雲
山の上
フラスコバーボン
走る稲妻

巻道に
忽然と咲く
銀竜草
記念の写真
壊れた眼鏡

夕立の
尾根に傘差し
来る人の
生意気話
山の四阿

夏山の
分岐で休み
山談義
リタイヤ組の
座るベンチや

老頭児の
リードで下る
ガレた沢
蟹を指さし
無邪気に笑う

義理チョコも
義理キャンデーも
中年の
それでも
嬉しい幻想の時

おばさんに
貰う義理チョコ
豪華版
娘に買って
貰おうか

仕事場に
昨日のチョコの
置き忘れ
慌てて隠す
冷汗の朝

懐に
隠して帰る
チョコレート
家では何処に
隠せばいいか

照れながら
眼を気にしつつ
チョコレート
見るも無惨に
型崩れした

のほほんの
娘出席
開所式
辞令を頂き
新社会人

卒業し
翌日出社の
忙しなさ
娘の門出
春の雨降る

久方の
隣の猫は
冬太り
彼岸の入りの
山支度の宵

山里の
豆腐ぶら下げ
沢の道
どこかで叩く
キツツキの音

春の風
駅の桜を
吹き飛ばし
彼岸中日
山行の朝

山の沢道
春風吹けば
黄粉のような
粉が飛ぶ

杉の花粉の
降りしきる沢
中年登山の
荒療治

酔い潰れ
春の嵐は
夢の中
鉢の転がる
ベランダの朝

ただソフト
ほいほい入れれば
忽ちに
挙動不審の
恐怖パソコン

一見の
スタンド蕎麦屋の
野菜天
春菊香る
町は春風

今は亡き
ジャズの酒場を
思い出す
今年も咲いた
並木の桜

春の日の
花の綻ぶ
並木道
二十年来
見続けた花

連翹に
枝垂柳に
雪柳
五分咲きの花
鴬の鳴く

また一つ
歯を失って
待合の
窓辺に映る
花七分咲き

その花が
格別旨いか
鵯よ
次々落とす
桜の古木

花冷えの
衿合わす朝
鵯は
並木に群れて
花を啄む

ベランダの
アマナの春は
まだ来ない
山の故里
恋しいのかも

見ても上がらぬ
成績表も
見せられないと
気に掛かる

賑やかな
駅のホームの
ランドセル
どの子も一つ
大きくなって

野球見て
不機嫌になる
中年の
心に残る
郷土の意識

這うように
登る山道中年の
宝鈬の花
稚児百合の花

占いは
当たりこそすれ
人を見む
金運ありとて
一円拾う

雨上がり
三羽親子か
恋敵か
追い掛け回す
桜散る道

花びらを
敷き詰め続く
並木道
山鳩番い
今朝も一緒に

幾年や
自前のゲーム
作りたく
念願叶う
フリーのソフトで

欲しかった
スクリプトの本
新刊で
信念通ず
不思議な運期

失業の
不安を抱く
弥生月
春日の駅に
咲く山桜

紅白の
桃は満開
並木道
桜の枝に
緑芽吹く日

雨傘と
慣れない客に
混む電車
煙る穀雨に
葉桜濡れる

八百屋の看板
黒虎猫は
芋を跨いで
お散歩に

シドミ咲く
山の眼鏡の
忘れ物
外人の穿く
キュロットおかし

小授鶏に
誘われて行く
山の道
大笑いの山
鐘の音渡る

鳥の啼く
札幌ラーメン
味噌ラーメン
コッヘル欲しい
もうじきお昼

目白啼く
山の巻道
白菫
長兵衛忠兵衛
耳に離れず

立ち止まり
菫に見入る
ハイカーは
通り過ぎるまで
ジッと動かず

オープンの
百円ショップ
大賑わい
中国柄の
蓋付きカップ

紅白の
並木は続く
花水木
春の嵐の
天気雨降る

音も無く
片手で蕎麦を
食う女
馬鹿らしくもあり
妖ましくもあり

彼方此方に
お礼差入れ
今晩わ
娘の語る
初給料日