猩々通信
HTML
愛問答4

2000 by 猩々

BACK HOME PC



今頃は
あの尾根道を
歩いてた
朝日を受けた
シャガの花叢

すれ違う
いつもの顔が
見えぬ朝
思い出せない
その顔姿

山雀の
鳴き合う鞍部の
道標
やっと安心
いつものコース

時鳥
素っ頓狂な
山日和
一丁平に
稚児百合は咲く

お旅所の
前で揉み合う
お御輿は
暗闇祭の
夕暮れ迫る

暗闇に
一基旅立つ
霊宮を
夜店畳んで
香具師迎える

太鼓鳴る
武蔵総社に
鯉幟
呆れる程に
露店犇めく

アルバイト
またアルバイト
北高尾
続く尾根道
咲く八重桜

稚児百合の
目の前に咲く
登り坂
三本松山
続く山並

宝鈬の
揺れる林の
尾根道を
悠々と行く
初老の一団

林道の
岩の清水の
蝌蚪の群
ケマンの花の
終わり写して

どこまでも
続く巻道
北高尾
不安の極め
索道の崖

リタイヤの
通草の生えた
山道は
秋の薮漕
判るだろうか

巻道の
木の葉隠れに
鷹の立つ
目に焼き付いた
風切の羽

初夏に咲く
尾根の林の寒葵
落葉の下に
花は埋れて

纏い付く
蝿と一緒に
尾根歩き
人珍しや
人気ない山

鳩程で
鴬色の
山の鳥
白き眼線
もう腹減った

尾根道に
花撒き散らす
八重桜
遠くの山に
雷の雲

忙しなく
山吹草の
熊ん蜂
少し休もう
山の頂

気怠さの
残る五月の
朝の道
心は未だ
山の尾根道

風薫る
五月の街の
八百屋には
小玉西瓜に
筍並ぶ

その前の
TVは君と
同い齢
初月給の
新品TV

古の
8ビットの
プログラム
やっと手にした
マイコンピュータ

小楢の
木建設予定で
移植され
昔知る人
胸撫で下ろす

団栗の
古木掘上ぐ
ショベルカー
大学通りに
花の実落ちる

夕暮れて
街は嵐の
雨と風
舞台TVの
江戸の七夕

ラーメンを
啜る頭上に
離島の機
野川公園
台風一過

乾涸らびた
家守張り付く
アスファルト
中天の影
一人塩吹く

心無し
息堰切って
水陸機
嶼島有事
ノカンゾウ咲く

嵐去り
どっと繰り出し
蚊遣り焚く
開けっ放しで
猫を待つ夜

嵐去り
軽鴨遊ぶ
川面には
短冊流れる
夏の野川よ

夏の朝
投歌を書いた
年賀状
カッと口開け
真っ赤なポスト

空を行く
洗車のマーク
宝石の
洗濯された
TVの世界

蒸し暑く
凍える様な
夕電車
タンクトップに
鳥肌の立つ

冷たくて
暑くて困る
冷房車
脱いだり着たり
汗かきの吾

冷房は
お客様の
迷惑ですと
心臓発作に
気を付けませう

仮移植
団栗の木の
募金箱
我幾十年も
賃貸暮らし

舟を漕ぐ
男の横は
空いた侭
女の横は
狸の男

外人は
トランプ遊びぞ
残り梅雨
八州平に
傘開く時

山道を
バイクに乗った
救助隊
へばり付くよな
サイレンの音

山里を
単車に乗って
僧侶行く
お盆中日
鳥の声なし

倒木を
手斧で刻む
山の道
ホウチャク草の
揺れる実二つ

炎天下
一つ残った
シドミの実
公園の猫
避暑と洒落込む

燕麦を
刈入て待つ
猫の声
ベランダ農夫
日曜の朝

真夏日の
天然燗酒
月に影
TVのそれと
見比べて見る

満月は
雲の間に間に
欠け始め
南の国の
梅雨明けの候

ラーメンに
玉の汗かく
昼下り
二本の傘の子
明日夏休み

ヘトヘトの
景信山で
缶ビール
日は傾いて
カナカナの鳴く

ランナーは
徒党を組んで
駆け抜ける
夏の尾根道
山百合揺れる

裾尾根に
雷鳴遠く
昼下り
鉄塔の下
笹百合の咲く

断崖の
滝を見下ろす
岩煙草
擦り傷洗う
小下沢の凉

踏ん張れば
不気味な声で
ギギと鳴く
蝉の飛び交う
苔の沢道