今頃は あの尾根道を 歩いてた 朝日を受けた シャガの花叢 すれ違う いつもの顔が 見えぬ朝 思い出せない その顔姿 山雀の 鳴き合う鞍部の 道標 やっと安心 いつものコース 時鳥 素っ頓狂な 山日和 一丁平に 稚児百合は咲く お旅所の 前で揉み合う お御輿は 暗闇祭の 夕暮れ迫る 暗闇に 一基旅立つ 霊宮を 夜店畳んで 香具師迎える 太鼓鳴る 武蔵総社に 鯉幟 呆れる程に 露店犇めく アルバイト またアルバイト 北高尾 続く尾根道 咲く八重桜 稚児百合の 目の前に咲く 登り坂 三本松山 続く山並 宝鈬の 揺れる林の 尾根道を 悠々と行く 初老の一団 林道の 岩の清水の 蝌蚪の群 ケマンの花の 終わり写して どこまでも 続く巻道 北高尾 不安の極め 索道の崖 リタイヤの 通草の生えた 山道は 秋の薮漕 判るだろうか 巻道の 木の葉隠れに 鷹の立つ 目に焼き付いた 風切の羽 初夏に咲く 尾根の林の寒葵 落葉の下に 花は埋れて 纏い付く 蝿と一緒に 尾根歩き 人珍しや 人気ない山 鳩程で 鴬色の 山の鳥 白き眼線 もう腹減った 尾根道に 花撒き散らす 八重桜 遠くの山に 雷の雲 忙しなく 山吹草の 熊ん蜂 少し休もう 山の頂 気怠さの 残る五月の 朝の道 心は未だ 山の尾根道 風薫る 五月の街の 八百屋には 小玉西瓜に 筍並ぶ その前の TVは君と 同い齢 初月給の 新品TV 古の 8ビットの プログラム やっと手にした マイコンピュータ 小楢の 木建設予定で 移植され 昔知る人 胸撫で下ろす 団栗の 古木掘上ぐ ショベルカー 大学通りに 花の実落ちる 夕暮れて 街は嵐の 雨と風 舞台TVの 江戸の七夕 ラーメンを 啜る頭上に 離島の機 野川公園 台風一過 乾涸らびた 家守張り付く アスファルト 中天の影 一人塩吹く 心無し 息堰切って 水陸機 嶼島有事 ノカンゾウ咲く 嵐去り どっと繰り出し 蚊遣り焚く 開けっ放しで 猫を待つ夜 嵐去り 軽鴨遊ぶ 川面には 短冊流れる 夏の野川よ 夏の朝 投歌を書いた 年賀状 カッと口開け 真っ赤なポスト 空を行く 洗車のマーク 宝石の 洗濯された TVの世界 蒸し暑く 凍える様な 夕電車 タンクトップに 鳥肌の立つ 冷たくて 暑くて困る 冷房車 脱いだり着たり 汗かきの吾 冷房は お客様の 迷惑ですと 心臓発作に 気を付けませう 仮移植 団栗の木の 募金箱 我幾十年も 賃貸暮らし 舟を漕ぐ 男の横は 空いた侭 女の横は 狸の男 外人は トランプ遊びぞ 残り梅雨 八州平に 傘開く時 山道を バイクに乗った 救助隊 へばり付くよな サイレンの音 山里を 単車に乗って 僧侶行く お盆中日 鳥の声なし 倒木を 手斧で刻む 山の道 ホウチャク草の 揺れる実二つ 炎天下 一つ残った シドミの実 公園の猫 避暑と洒落込む 燕麦を 刈入て待つ 猫の声 ベランダ農夫 日曜の朝 真夏日の 天然燗酒 月に影 TVのそれと 見比べて見る 満月は 雲の間に間に 欠け始め 南の国の 梅雨明けの候 ラーメンに 玉の汗かく 昼下り 二本の傘の子 明日夏休み ヘトヘトの 景信山で 缶ビール 日は傾いて カナカナの鳴く ランナーは 徒党を組んで 駆け抜ける 夏の尾根道 山百合揺れる 裾尾根に 雷鳴遠く 昼下り 鉄塔の下 笹百合の咲く 断崖の 滝を見下ろす 岩煙草 擦り傷洗う 小下沢の凉 踏ん張れば 不気味な声で ギギと鳴く 蝉の飛び交う 苔の沢道 |