猩々通信
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回峰新世紀1

2001 by 猩々

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初春に
宮を見おろす
谷保の杜
甘酒片手に
望む多摩川

猫が来て
しっかりしろと
励まされ
燕麦の鉢
未だ芽が出ず

閉じ込もる
三元日は
本の虫
青空に舞う
風見の風車

冬の夜
震えて読んだ
過去の本
団地の庭に
降りしきる雪

成人の
祝いの朝は
雪景色
アナウンサーの
コート旗めく

子の使う
ポストペットの
面白さ
冬の日の朝
暫し見とれる

鶺鴒が
スイングをする
昔道
庚申塚の
雪の名残り

老いらくに
語る受験の
誇らしさ
並木の空は
冬の雨雲

焼芋の
売り声流れる
神田川
椿の花の
咲いた春の日

糸杉に
懸かる三日月
冬の空
府中の森に
梅の香聞こゆ

掃除婦の
タモに落葉と
薄氷
府中の森の
鴨の居る池

隼は
一直線に
冬の空
新選組の
史跡飛過ぐ

駅前の
緋寒桜に
鵯の
番の遊ぶ
春巡り来て

ベランダの
喇叭水仙
名札挿す
隣の猫が
駆け抜ける夜

雨上がり
囀り競う
駒鳥は
宮の塚山
拳膨らむ

お彼岸の
恋啼をする
鵯の
頭上遥かに
ジェット機の行く

紅白の
梅咲き揃う
小下沢に
杖の音軽く
続く山道

春分の
尾根の隘に間に
残り雪
コニチワと言ふ
青い目の人

中日の
駒鳥の啼く
小下沢に
観察会の
人の屯す

仙人掌の
日々太り行く
傍らで
水仙の花
頭巡らす

連れを呼ぶ
カルガモの啼く
神田川
若木の桜
咲き初めし朝

雨上がり
丸い双葉の
寒葵
桜の花に
鵯遊ぶ

お花見と
雪見が一緒の
土曜日の
花見弁当
デパートの地下

春風に
桜散り初む
神田川
目方で決まる
弁当の値段

城址の
山に桜の
霞立つ
白き酢漿草
山道被う

太郎坊は
裾に撓に
頂に
囀り交わす
鴬の声

公園の
パーゴラに吹く
初夏の風
半月前の
花は若葉に

行楽の
年寄りが来て
春の日の
席を替われと
通勤電車

菜種梅雨
電車の窓を
流れ去る
蛇革の靴
リズムを刻む

宝鐸の
揺れる山道
一人行く
酔声響く
山桜の下

此の道を
拓いた者だと
言ふ男
漆の中を
児等を引き連れ

薮漕で
失せ物多し
安リュック
沢の古道
岩煙草の葉

雨上がり
何処で啼くのか
時鳥
廚で伸びる
長芋の蔓

鴬と
時鳥の啼く
扇山
帰りの土産
木瓜の実三個

石斛を
講釈付きで
見る谷間
沢の音高く
白々と咲く

ベランダの
鉢の繁みの
山椒の木
地図の山道
辿る夏至の夜

妻の居ぬ
朝の廚の
迎え酒
しとしと雨に
鵯は啼く

ラーメンの
無料サービス
新店舗
行列作る
程でない味

倉岳の
尾根に転がる
天蚕糸繭
雨は上がって
蜩は啼く

夢想する
立ち喰い蕎麦の
シンポ会
歴史列伝
展望啜る

花火の日
昼寝を破る
蝉の声
笊の梅干
塩を吹き出す

間を置いて
芸術花火の
焦がす空
田舎の花火
思い出す夜

尺玉が
フィナーレ飾る
夏の夜
幾万人の
拍手喝采

真夏日の
山の撓の
直中は
遠くに蝉の
声がするだけ

二度に咲く
仙人掌の花
此の夏は
熱中症の
被害続出