猩々通信
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毛糸の帽子1

1997-1999 by 猩々

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サボテンの
白き花咲く
夏の夜の
まん丸月に
蝉の子いでし

真夏日を
迎える朝の
バス停の
躑躅の上に
蜘蛛の巣の張る

鵯の
蟷螂を追う
上水の
木漏れ日の中
一人僕居る

秋の日の
夕暮れ迫る
山里の
笹の音寒し
野辺の送りや

夕暮れて
妙法寺川の
橋の上
豚カツくわえ
猫走り行く

じゃれついて
見上げる三毛の
野良子猫
路上の箱に
人の寝る街

……………………

強請られて
また強請れて
強請られて
あの、大臣席が
空いてますけど

譲られて
また譲られて
譲られて
あの、優先席が
空いてますけど

無視されて
また無視されて
無視されて
あの、シスオペの席
空いてませんか

……………………

看護婦と
気軽に話す
病院は
通い始めて
一年となる

大学の
通りを見降ろす
喫茶店
医療の値上がり
実感した日

秋霖は
並木を濡らす
窓の外
大学通りの
コーヒーショップ

蟾蜍
今夜も逢えたね
大学通り
秋霖けぶる
夜の散歩者

でかい足
してるんだねと
彼は言う
計りの数字
見ないで欲しい

カロリーを
減らせと先生
おっしゃいますが
茶碗も取れずに
食べられますか?

気がつけば
アオマツムシの
鳴く夕べ
大学通りの
夜の散歩者

秋風に
振り返り見れば
ゴミの山
病上がりの
吹き寄せられて

ナーバスに
なるなと先生
おっしゃいますが
これ地なんです
大きなお世話

夕暮れて
娘の睨む
窓辺には
ぶらり搖れてる
ポケット電話

赤星に
向かって飛んだ
流れ星
金金金と
叫ぶ同人

はぶられて
古城の畔
白け雲
鳴くやざざ虫
鯉の佐久らん

ずるずると
鼻水で食う
駅の蕎麦
アオマツムシは
ひっきりなしに

寒の露
里芋の葉に
衣被
育て孫芋
霜の降るまで

秋霖の
街の灯火
蝦蟇蛙
お元気でしたか
夜の散歩者

銀杏の
香りを聞いて
散歩路
シャベルで掬った
犬の飼い主

シーサーは
遠くの空の
十三夜
地豆に泡盛
髭面は酔う

栗盗む
吹き越す風は
十三夜
団地の窓に
尾花は揺らぎ

月の夜に
とぼとぼ一人
散歩者の
痩せぎす影に
笑う木犀

お御輿と
天狗御楯
獅子頭
大八車に
宮司乗る輿

神様と
いつもの路を
行くべきに
目白押す人
やぼのてんじん

……………………

パソ通は
私と彼の
交換日記
ゴミに埋もれた
愛の聶き

コムスター
接続料が
追ってくる
はよはよせい!
はよはよせんか

GTは
真っ赤になって
唸りだし
はよはよせい!
はよはよせんか

辿り着く
WTEHMの
宇宙基地
はよはよせい!
はよはよせんか

SEDよ
ベムを見つけて
噛み砕け
はよはよせい!
はよはよせんか

出撃の
武装準備だ
ATOK
はよはよせい!
はよはよせんか