猩々通信
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狛犬謡集
1999 by 猩々
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PC版「狛犬・都々逸写真集」より転載しました。


【出来合い】
口より先に
手を出す君は
それまた可愛い
猫だもの

【純愛】
学歴不問
容姿は問わず
何も要らない
臍だけで

【涼菓子】
冷麦ですか
しらたきですか
一本箸です
トコロテン

【げて】
てんぷらかすに
あぶらげそえて
おかかたっぷり
おばけそば

【オトカのションベン】
カンカン照りの
真夏の杜の
蝉も鳴き止む
天気雨

【赤貧】
金金金と
心に決めて
とっさに出ない
流れ星

【キャリアウーマンず】
昼時ですね
ご飯にしましょ
買出し決める
阿弥陀籤

【怪談】
輾転反側
眠れぬ夜に
暑中見舞いに
猫の来る

【霍乱】
お盆休みの
通勤電車
座って気付く
シート席

【寝不足】
体震わせ
声張り上げて
夜通し続く
蝉時雨

【ベンチ】
速く指してよ
遅いんだから
炎天野原の
空将棋

【カクシャク】
握るステック
力もこもる
ゲートボールの
お突き合い

【年頃】
一分刻みで
約束あるの
芸能人かい
うちの子は

【繭玉】
顔を火照らせ
息詰め乍
玉の汗かく
ドンド焼き

【覚悟】
もうこれまでか
続きは要らぬ
野球ビールの
ほろ苦さ

【視界良好】
回るよ回る
ぐるぐる回る
高層団地の
風見鶏

【大同小異】
百円ショップで
同じの見たよ
何それほんと?
オキノドク!

【浴衣】
雷さんだね
黄髪に耳輪
尻っぱしょりに
腕まくり

【お洒落】
休みになって
ネクタイ締めて
遊びに出かける
技術職

【ヤケ】
夜中の歯痛
我慢が出来ぬ
酒を食らって
尚痛い

【不信】
予報信じて
傘まで買った
なのに降らない
秋の空

【真心】
お世話になった
お礼の気持ち
決意揺るがす
1カートン

【中年の意地】
道なき道を
峰から峰へ
笹漕ぎ疲れの
回峰行

【輪廻転生】
それじゃさよなら
また会う日まで
これで見納め
一万円

【温故知新】
都心の道は
日進月歩
あてにならない
古い地図

【パソ・コンプレックス】
面倒臭から
電源切るよ
豪傑ですわ
部長さん

【苦労症】
旅の途中の
古書店巡り
両手に土産
古雑誌

【恋人】
前略付きで
メールをよこす
慇懃無礼な
粋なヤツ

【復活】
今年も咲いたよ
ツルボの花が
残暑見舞いも
出し納め

【ステータス】
いくらなんでも
こんなのないよ
夏のトリマー
ヒマラヤン

【放れ凧】
お祭りですか
炊出しですよ
釜にお粥の
防災日

【経済】
本読みながら
山道歩く
半歩違えば
谷の底

【血筋】
これでも昔は
看板娘
ええ、でもやめて
股団扇

【方向音痴】
あそこがここで
こっちが北で
おかしな地図ネと
叱られて

…狛犬謡集完結…