【3/猩々狂歌集/猩々】

51
布団での
暖ったかさが
気持ちいい
涼しさ増した
今日この頃は

52
サイフォンの
ランプ外せば
ポコポコポ
茶店の窓に
秋の雨粒

53
朝日差す
鏡に向かいて
ルージュ引く
日焼けの跡の
艶やかな君

54
待ちぼうけ
佇む駅の
片隅に
吹き寄せられし
秋の木の葉よ

55
腕組んで
道玄坂の
街灯り
丸山町は
秋の夕暮れ

56
へをこけは
すかしのはらの
すすけさよ
きのふのたらちち
けふのおめたま

57
風に乗り
南国の鳥
迷い来る
錦秋匂う
まさに異国ぞ

58
捨てられた
子犬をそっと
抱き上げて
夜明けの星の
瞬く寒さよ

59
虫の音に
垣根を覗く
猫の尾は
金木犀の
風を靡かせ

60
月影に
焼き芋売りの
声高く
流れる雲に
立ち待ちの盃

61
堅団子
臥し待ち月夜の
相伴は
消え入りそうな
コオロギの声

62
眺めれば
狭山ヶ丘の
秋空よ
勝利を祝う
花火の雲よ

63
教室で
給食たべる
運動会
父母も帰宅し
砂埃の校庭

64
月隠れ
手探り歩く
上水路
今を知らせる
カンタンの声

65
秋の夜の
雨は舗道に
降りしきる
赤きパンプス
ひとり濡れなん

66
石段を
辿れば地下より
聞え来る
秋の枯れ川
デキシーの調べ

67
ギニョールは
ライトをあびて
見栄を切り
蹴込みの中で
舌を出す君

68
駅の蕎麦
掻き込み仰ぐ
秋空に
非情のベルは
汁も飲ませず

69
コーヒーを
ポットに落とす
窓べには
四季なり苺の
朝露に濡れて

70
スーパーの
版下に貼る
恵比寿様
深まる秋も
忙しくなりぬ

71
夕暮れて
スケート遊びの
子供達
給水塔の
影は落ちなん

72
香番表
デベソの君は
今日もまた
ポは居ないかと
流し見ている

73
着古しの
ポッケの中の
ドングリは
何時かの旅の
山の思いで

74
ヒヨドリの
梢に群れて
騒ぎおる
朝のしじまの
露も散りなん

75
もの思う
秋もますます
深まりて
うつつにあるも
夢のまた夢

愛問答INDEX
はじめに
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2/猩々狂歌集
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