【4/猩々狂歌集/猩々】

76
気が付けば
白粉花の
庭に咲く
知らでか過ぎし
日々の哀れよ

77
秋深く
まいまい井戸の
水清く
悠々移ろう
ただ秋空の

78
スーパーで
求めた秋の
活魚食う
山葵を利かせて
今日給料日

79
紐解けば
操くる頁の
狭間より
秋だと言うのに
蝶の舞い飛ぶ

80
劇団の
仲間とバスの
後部席
肩に頬寄せ
小悪魔の君

81
夜の駅
最終バスの
尾灯光
ゆらり揺れてる
屋台の明り

82
バスを待つ
スパンコールの
秋の空
ネオンの中で
君は微笑む

83
バス亭は
排水口の
湯気の中
深夜に灯る
青楼の窓

84
闇の夜
オドロオドロの
バス停に
ブナ、カシの実は
降るしきる也

85
朝寒に
夢の国より
連れ来たる
彼奴に託す
冬の始まり

86
コゲラ突く
枯れ木の掛かる
上水路
怖川の名の
面影いずく

87
吐く息の
白くもなりて
上水の
朝を駆け行く
人と犬かも

88
風吹けば
初冬の空は
かき曇り
狭山ヶ丘の
カミナリ様よ

89
工場に
人影はなく
日曜日
機械の音は
空耳と聞く

90
迫り来る
納期を睨む
カレンダー
穴が開くよと
髭面は言う

91
寒空に
車を拾う
街の角
肩に寝息の
君に問う夜

92
振り返る
君の黒髪
木枯らしの
上手下手に
落ち葉の拍手

93
稽古場の
外は満天
流れ星
かねかねかねと
君の宣う

94
噛みしめる
スルメであおる
チュウハイの
ブルース酒場の
御宝熊手

95
コーヒーは
ゆるりゆるりと
渦を巻き
猫の目写す
占いの君

96
夜をついて
時雨降りそぶ
アパートの
炬燵に丸く
転た寝の君

97
ゴキブリが
いらっしゃいする
ラーメン店
絶対旨いと
二杯食う君

98
冬の日の
ベンチに残る
温もりは
腕組む二人の
恋の残り火

99
冬嵐
去った朝の
歩道には
幾重にもなる
落ち葉の絨毯

100
葉を落とし
冬に備える
公孫樹
点滅灯の
新たな装い

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