猩々通信
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Yeah 2

2003 by 猩々

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年の瀬の
兎の小屋の
隙間風
寒空流す
芋売りの声

蹲る
犬に木枯らし
カフェテラス
リースの灯り
続く町並

鼻啜り
眼鏡曇らせ
月見蕎麦
寝惚けたような
巨大なツリー

花守りの
紫花菜
眠る夜
空にオリオン
傘をさす月

艶蕗は
星の瞬き
街眠る
ジングルベルと
時雨降る道

何処迄も
空のポッケの
カレンダー
町にツリーが
輝いている

霜の日の
車の屋根に
黒い猫
梢の烏
睨みあう午後

般若湯
懐寒し
雨上がり
ツリーの下で
踊る餓鬼達

快速に
コート噛まれた
冬の夜
ホームに蕎麦の
香り漂う

朝寒や
女子高生の
臍座り
微睡んで聞く
メール打つ音

手袋を
剥いでジッポの
並木道
落ち葉に咽ぶ
小春日の朝

買出しの
葱を背負って
暮れの町
灯火纏う
銀杏の並木

鵯が
一掻で越す
上水路
桜黄葉
装いの冬

問い掛ける
膨雀の
塀の猫
師走の雨に
懐寒し

遠吠えと
団扇太鼓の
青い空
黄金振りまく
銀杏の並木

架線から
梁へ烏の
隠し事
どんより空の
乗り継ぎの駅

集く虫
蝉の時雨の
お月見の
半裸の臍の
闊歩する街

ただ独り
アケビ転がる
森の中
ストーブ炊いて
ラーメンを食う

旧道を
先に行く人
月日星
聞きなし登る
金毘羅の道

執拗に
振り向く犬は
横歩き
青松虫の
静けさの中

気に入りの
店で手にした
ジャケットを
蕎麦茶飲みつつ
飽かず眺むる

涼風が
駅から駅へ
吹き抜ける
秋の日差しの
椅子なし電車

目高棲み
沈花生浮く
水槽に
ペットボトルの
せせらぎ注ぐ

食堂の
置きカンテラに
見入る猫
青松虫は
並木に吼える

雷様は
ファッション街で
おお暴れ
臍を求めて
走る稲妻

マタタビに
釣られ寝転ぶ
チビ助の
頭が小突く
夕顔の鉢

二日目の
駅の階段
笑う膝
稲妻走る
飛び石の沢

野営地の
オープンセットに
仰愕す
回峰行の
秋の始まり

景信の
飯盒飯は
塩の鮭
夏の残り火
茜飛ぶ空

花束に
埋もれ微笑む
君の影
苫屋に集う
美女の目の皺

乗り越して
残る切符は
君の日の
微かに滲む
スタンプの痕

霊園の
杜の木陰に
つく法師
花束ひとつ
君に手向けん


赤星の
秋の夜空の
瞬きは
お針子だった
君の微笑み

取り囲み
八艘飛びの
群烏
獅子奮迅の
若き暹羅猫

蛸焼を
頬張る臍の
街灯かり
青松虫の
叫ぶ夕暮れ

処暑の日を
終日惰眠の
夢枕
山の茶店の
日暮の声

故郷は
人の血潮の
暑さかな
時の彼方の
逃げ水を追う

君の来ぬ
夜のペランダ
草雲雀
隣の人の
鼻をかむ音

凭れ来る
美女は狸か
女狐か
秋の長雨
駅は遠のく

秋の雨
事故の電車を
待ち侘びて
括る文庫の
駅蕎麦の染

お懐かし
ペン字手書きの
お玉稿
当て字崩し字
秋霖の候

切り売りの
西瓜の皮は
冷凍庫
鉢の草むら
蟋蟀が鳴く

若猫の
キョトンと座る
木の上で
ミンミン蝉は
気だる気に鳴く

夏は過ぐ
暑中見舞も
出せぬ侭
妻よ輩
笑え貧夫を

虚ろな目
駅から駅へ
扇子の手
枯葉の香り
弱冷車両

蟷螂の
斧に恐怖の
子供達
水攻めにする
熱い夏の日

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