猩々通信
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雪寄草1

2002 by 猩々

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山猿と
初日を拝む
高尾山
紅葉園台
霜の花叢

景信へ
導く猿の
冬肥り
初日を浴びて
安倍川を喰う

新調の
茶屋の親父の
登山靴
年始を兼ねた
猿の報告

初日見乍ら
甘酒交す
尾根に花咲く
シモバシラ

町角で
雉と黒虎
睨み合う
早杉花粉
鼻を擽る

霞み立つ
遠くの富士の
見え隠れ
カレー暖め
飯盒で喰う

吊り橋に
降り初む山の
細雪
団子になった
霜の花片

書初めは
顧客名簿の
古書の市
幾星霜が
横たわる春

焚付や
明日は成人
どんどの日
梅も綻ぶ
谷保の天神

綻ぶ梅に
御御籤結ぶ
どんどが焦がす
恋心

山を降り
博物館の
土竜穴
一冊有余の
パンフ集める

柚七味
山椒芥子と
目が移り
振袖姿
ケーブルの駅

ドトールで
貯めた吸殻
処分して
此処も振袖
山裾の駅

松も取れ
サイト巡りは
糊代の
序に送る
三十一文字

三ッ塚の
ポシェット一つ
冬の朝
牛の商人
哀れ守銭奴

鴬の
遊ぶ谷保駅
寒桜
見知らぬ人に
煙草の火を貸す

デパートの
階段登り
山の店
霙の交じる
豆蒔の午後

街中の
瘤から瘤へ
アルバイト
霙の中に
パンダ佇

マドラーに
一息入れて
道化服
マジカマイムの
春風の街

梅の香に
春の麗の虫供養
手紙に包む
餓鬼の徒

鼻啜る
仕草に魅せる
幼き日
向いの席の
春の日溜り

健やかに
大きくなって
風来坊
恋鳴をする
黒虎のチビ

コンビニで
カンパニ買って
山の朝
春の寝坊助
杖を忘れる

山繭の
黄色が落ちる
春の山
金比羅登り
巡礼独り

鴬は
行く先々で
見え隠れ
Aのポイント
崩落の路

蒼い眼の奴
顎擧げて
チワッスと吼る
琵琶の滝

そら書けた
選者のマーク
朱々と
送り続ける
投稿の欄

そら書けぬ
選者のマーク
朱々と
歌誌の添削
高が知れてる

頬白の
番が遊ぶ
窓の外
ドトールの朝
鼻を噛む音

オーシャンと
名付けた鸚哥
洗い場で
水浴びをする
啓蟄の朝

水温む
金魚の浮かぶ
調和槽
油断めさるな
チビ助来るぞ

猫の居た
日溜りに咲く
木瓜の花
揚々春は
移る往くかな

鴬の
山を降りれば
梅祭り
街には桜
綻び初めし

山茱萸
関所の跡の
梅祭り
ペットボトルの
梅酢赤々

並木道
鶇は旅の
一休み
花の先触れ
駆け回る朝

中日の
漫ろ歩きに
花嵐
心も飛んで
霞む思い出

コンビニの
軒の新居の
翼黒の
飛び行く街に
花は舞散る

散る花に
盛か掛かで
迷う腹
優柔不断
O型の昼

大盛を
生冷でねと
厭な客
湯桶出す手
少し小刻み

道端に
携帯電話の
落ちる夜
花見追出
揺れる提灯

四畳半
ベランダ越の
花吹雪
積読本の
虫の這ずる

姿見の
池に花散る
恋ヶ窪
日影山では
山雀の啼く

禁煙の
蕎麦屋の前に
人の列
花見序の
酔狂な眺め

降り積もる
花を蹴散らす
犬連れて
宴も酣闌
シャベル持つ人

Tシャツの
大学名は
誇らしく
亜麻色の髪
花も恥じらう

そば芳の
笊にぐらつく
歯を押え
飴を斬る様な
包丁の音

週末を
二度賑わして
花は散る
ブランコ通り
そば芳の笊

ユニクロの
安売りパーカー
でか過ぎて
高目の物を
買う羽目になる

オープンの
珈琲ショップの
クーポン券
欅並木の
爽やかな声

※4月1日別荘で
ブン投げる
携帯電話
新緑の
如何に居わすか
あらあらかしこ

新学期
少し夜桜
馬鹿騒ぎ
横目で睨む
歩くオバ連

花の散る
朝日に覚ふ
白昼夢
戸惑い乍
髭を剃る顔

行く春に
木馬が揺れる
飾り窓
中年の顔
胡蝶花の足元

尾長飛ぶ
花も残りの
並木道
山吹色の
朝風が吹く

携帯を
鼻啜り恙
まさぐる手
黒網タイツ
新緑の窓

読唇し
飛び乗って来た
異邦人
通勤快速
冷房入る


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