猩々通信
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雪寄草3

2002 by 猩々

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嘶いて
玉砂利を掻く
一の駒
夜も更けてきて
社務所御祓い

ジョッキーは
烏帽子束帯
競馬式
白い鬣
並木を駆ける

アラブ馬が
サラブレットを
追い抜いて
欅の馬場の
夜競馬式

疾駆り終え
三本締の
競馬式
老若男女
柏打つ夜

山に行こうか
祭りに行こか
貧乏人の
GW

芥子坊主
捌を辿って
宮の下
隧道の先
並木の続き

道塞ぐ
御触れ太鼓の
引き回し
振舞い酒に
遠い雷鳴

山車だけが
どでんと鎮座
昼の街
空気人形
背負う父親

暗闇の
御幸の輿の
賑やかさ
えいさほいさの
田舎の祭り

四の宮
喧嘩騒ぎの
先払い
モールとなって
烏帽子が揺れる

三基拝
麦酒探して
露店街
関東中の
香具師集まる


ひっそりと
馬上の使者は
宮を発つ
白い妖精
ルージュの従者

笙吹の
乙女が叩く
大太鼓
夜の御神楽
本町の辻

梅紫蘇の
お握詰めた
行李箱
山へと向かう
御還の朝

ギャラリーの
庭に展示の
蚊遣立
丸太の土留
目白啼く山

ストーブは
不機嫌そうに
炎出し
後の祭りの
お還りの昼

豪快に
ベンチで伸びる
大丈婦
ブロンド靡く
初夏の山風

堂鳩が
豆菓子強請る
靴の上
摘んだ地豆
二羽で取り合う

壊れ釜
花瓶に活けた
菖蒲の葉
胡瓜転がす
爼の塩

同輩の
婦人と道の
譲り合い
傾け傘に
小糠雨降る

若葉雨
路地で摺依る
白い猫
南の島の
梅雨入りの報

音も無く
頭上を過ぎる
モノレール
程久保川に
烏追う鴨

雛連れた
孔雀を狙う
檻の獅子
ソフトを嘗める
臍出の親

雪豹の
ジャンプに沸いた
人垣に
シルバーバスの
鈴の音響く

葉紫陽花
不動ヶ丘の
寺の鐘
多摩川目指し
御輿を擧げる

小綬鶏が
けたたましく鳴く
並木道
ルーズソックス
駅への突進

尾を降って
街の蕎麦屋の
黒虎は
フーリガン報
しばし見上げる

ぷっくらと
駅の庇の
燕の子
スイカカードを
叩き付ける人

差し迫り
感を頼りに
本を得る
ハッピーペイント
初版一刷

冷や狸
老婆が作る
駅の蕎麦
暖簾を揺らし
吹き抜ける風

胸揺らす
袖無し服は
颯爽と
並木に微ぐ
亜麻色の髪

音忙し
脚漕ぎ舟は
水尾散らす
瓢箪池に
紫陽花の影

桜坊
並木に蒔いた
山羊の糞
青葉に蒸せる
予備滑走路

鉢合せ
猫が顔出す
塀の上
梅雨の晴れ間の
鉄線の花

蝦蟇の子が
並木に跳ねる
雨上がり
悲鳴を挙げて
強噛着く腕

小仏の
沢に桑の実
たわわに熟れる
金比羅稜を
隼が往く

写真機も
媒体なければ
重いだけ
狩蜂の飛ぶ
Aのポイント

裾尾根の
境標辿り
蛇滝道
カウベル鳴らし
黒犬が来る

裏道で
ピクニックする
カップルの
ランチを跨ぎ
中年は行く

ラーメンは
家に置き去り
湯だけ沸く
初夏の高尾の
通草の下で

水行の
気合いに汗の
眼鏡拭く
清滝羊歯の
茂る山道

何に付け
梧鼠の技量と
螻蛄の芸
阿闍世根性
艾人の夏

漬梅の
機嫌伺う
夏至の朝
鵯だけが
飛泳ぐ空

サッカーに
一喜一憂
ウインミー
油売ってた
縞の宅配

千円の
鬼灯市に
ミニ汽車の
汽笛が響く
降りそうな空

梅雨寒の
夜に着込んだ
セーターは
妻の手編の
古惚けた色

草枕
電網行脚
古里の
懐かしい人
御尊顔拝す

事故続き
右往左往の
朝の駅
あじさい蕎麦屋
鰹の香り

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