白む窓 鵯の啼く 熱帯夜 新聞配る 階段の音 四階を 弾道で飛ぶ 鵯は 日よ火よと 夏の朝呼ぶ 朝風呂は 握り×× 熱帯夜 一時間もの 鵯の声 南海の 嵐は梅雨の 中休み ベランダに吹く 三宅の臭い 忍び寄る 斑の猫蹴る 暑い夜 ベッカム鸚哥 歌い続ける 暑気払い 青い頭に 驚いて 四時から起きて 朝日で焦がす 笑う人 目を逸らす人 逃げる人 禿に夏の 日差し凍み込む 停車場の 電車の窓に 滝の雨 ホームに霞む 蕎麦屋の暖簾 台風の テロップ流す パソコンに 外国からの アポが舞い込む 定席を 蕎麦屋の猫が 嵐の日 勝手口から 中元届く 蟋蟀の 集く叢 蝦蟇の子は 台風一過の 夜へ這い出す 欄干で 鳥を見せてと 鳴く猫の 毛並みに戦ぐ 夏の夕風 植込みの 山百合白く ビルの影 目白啼く街 ミニバスが行く コンビニの 灯に爆ぜる 虫の音 ATMで 麦酒を求む 初蝉は 見舞いの妻の 夕に鳴く 広場に花火 夏休みの子 昼下がり 一人川辺の 風の中 通草の茂る パーゴラの下 茹だる昼 猫の蕎麦屋の 力蕎麦 坊主頭に 暑気が噴出す 夕暮れて 張り手可愛い 痴話喧嘩 汗を拭き拭き 通り過ぎる人 夏の夜の 猫の頭は 拳強 鳥のご機嫌 チビは甘える 病院の 帰りの道の 百日紅 陽炎の街 野川を目指す 武蔵野の 天文台の 蝉時雨 リュックの背中 へばり付くシャツ 遠雷に 梅を取り込む ベランダに いつものように 蟋蟀は鳴く 鵯と 共に鳴きだす 油蝉 ドアに突っ込む 新聞の音 桧葉の木に 寄り固まって 蝉の穴 ジリジリ焦がす 並木の朝日 取り込んだ 梅を摘んで 一人酒 団地の空に 稲妻走る ベランダに 打ち水をして 夕涼み やがて鳴きだす 蟋蟀の鉢 隣人の 息子を起こす 国訛り ミンミン蝉の けたたましい朝 不如帰 並木の木陰 バスを待つ 金太郎お掛け サングラスの娘 不如帰 禁煙蕎麦屋の 藪茗荷 遠い古里 せせらぎの朝 行く夏の バスのチラシの 甲子園 学生服の 思い出遥か 今頃は 製本されて 取次に 掲載雑誌 待ち侘びる夏 |