猩々通信
HTML
雪寄草4

2002 by 猩々

BACK HOME PC



白む窓
鵯の啼く
熱帯夜
新聞配る
階段の音

四階を
弾道で飛ぶ
鵯は
日よ火よと
夏の朝呼ぶ

朝風呂は
握り××
熱帯夜
一時間もの
鵯の声

南海の
嵐は梅雨の
中休み
ベランダに吹く
三宅の臭い

忍び寄る
斑の猫蹴る
暑い夜
ベッカム鸚哥
歌い続ける

暑気払い
青い頭に
驚いて
四時から起きて
朝日で焦がす

笑う人
目を逸らす人
逃げる人
禿に夏の
日差し凍み込む

停車場の
電車の窓に
滝の雨
ホームに霞む
蕎麦屋の暖簾

台風の
テロップ流す
パソコンに
外国からの
アポが舞い込む

定席を
蕎麦屋の猫が
嵐の日
勝手口から
中元届く

蟋蟀の
集く叢
蝦蟇の子は
台風一過の
夜へ這い出す

欄干で
鳥を見せてと
鳴く猫の
毛並みに戦ぐ
夏の夕風

植込みの
山百合白く
ビルの影
目白啼く街
ミニバスが行く

コンビニの
灯に爆ぜる
虫の音
ATMで
麦酒を求む

初蝉は
見舞いの妻の
夕に鳴く
広場に花火
夏休みの子

昼下がり
一人川辺の
風の中
通草の茂る
パーゴラの下

茹だる昼
猫の蕎麦屋の
力蕎麦
坊主頭に
暑気が噴出す

夕暮れて
張り手可愛い
痴話喧嘩
汗を拭き拭き
通り過ぎる人

夏の夜の
猫の頭は
拳強
鳥のご機嫌
チビは甘える

病院の
帰りの道の
百日紅
陽炎の街
野川を目指す

武蔵野の
天文台の
蝉時雨
リュックの背中
へばり付くシャツ

遠雷に
梅を取り込む
ベランダに
いつものように
蟋蟀は鳴く

鵯と
共に鳴きだす
油蝉
ドアに突っ込む
新聞の音

桧葉の木に
寄り固まって
蝉の穴
ジリジリ焦がす
並木の朝日

取り込んだ
梅を摘んで
一人酒
団地の空に
稲妻走る

ベランダに
打ち水をして
夕涼み
やがて鳴きだす
蟋蟀の鉢

隣人の
息子を起こす
国訛り
ミンミン蝉の
けたたましい朝

不如帰
並木の木陰
バスを待つ
金太郎お掛け
サングラスの娘

不如帰
禁煙蕎麦屋の
藪茗荷
遠い古里
せせらぎの朝

行く夏の
バスのチラシの
甲子園
学生服の
思い出遥か

今頃は
製本されて
取次に
掲載雑誌
待ち侘びる夏

△page top